クルドを知る会『大村入管ナイジェリア人飢餓死事件の調査発表を受けての共同声明』


2019/10/07/23:54:00

クルドを知る会が 『大村入管ナイジェリア人飢餓死事件の調査発表を受けての共同声明』を発表しました。以下に引用します。https://drive.google.com/file/d/1GqAAZGhQ-PYh-ZPvhpyAv07N9QiKZWJR



2019年10月7日
クルドを知る会
日本クルド文化協会
クルド人難民Mさんを支援する会

『大村入管ナイジェリア人飢餓死事件の調査発表を受けての共同声明』

法務省出入国在留管理庁は10月1日、長崎県の大村入国管理センター(大村入管)で今年6月、収容中のナイジェリア人男性(40代)が死亡した問題で、死亡の原因は食事や治療を拒否したことによる「飢餓死」という調査結果を公表した。入管庁は「命に危険が及ぶと再三警告したが、本人が強く治療を拒否した」として「対応に問題はなかった」との見解を示している。しかし、わたしたちは入管庁のこの見解に対して、多大な疑問を感じている。
 入管庁はこの男性に早期に仮放免を許可するべきではなかったのか。今も各地の入管で、仮放免を求めてハンガーストライキ(ハンスト)を行う被収容者が大勢いる。その中には多くのクルド人難民申請者が含まれており、入管の対応に問題が無いというのであれば、再び同様の事件が繰り返されることが懸念されるため、わたしたちはここに声明を発表する。
 ナイジェリア人男性はなぜ、日本の外国人収容所で餓死しなければならなかったのか。
彼は、過去に窃盗などの罪で4年の実刑判決を受け、服役を経て仮釈放された。しかしその後、2015年11月から大阪入管、2016年7月からは大村入管に収容され、収容期間は3年7ヶ月の長期にわたった。その間、4回の仮放免申請をしたにも関わらず認められなかった。入管は申請却下の理由を「起こした事件が悪質で常習性があり、許可できなかったから」だという。しかし服役により罰を受け、罪を償い、法務省によって仮釈放された外国人を、今度は同省入国管理局が無期限に収容をするというのは、これは二重罰であり、また、犯した罪に対してあまりにも罰が重すぎるといえる。日本人が刑務所から仮釈放された場合は、円滑な社会復帰を図る目的で、刑期満了までは保護観察つきで拘禁状態を解かれる。それなのに、この男性は仮釈放中に外国人収容所で拘束され続け、餓死することになってしまった。
 
 男性は今年5月末に4度目の仮放免を求めてハンストを行い、食事を拒否。その後、点滴などの医療さえも拒否していた。日本人と結婚していたこの男性には、その女性との間に娘がいた。自分の娘と離れ、会えなくなることへの不安などから、帰国を選べなかったという。
 6月18日ごろ、男性は時おり水を口にするだけで、すでにほぼ寝たきりとなっている。6月24日、目を開けたまま反応しなくなった段階で救急車が呼ばれ、搬送先の病院で死亡が確認された。衰弱していく様子は記録されていた。だが、入管はその様子を観察しながら、男性が切実に求めていた仮放免を許可することはなかった。食事と医療を拒否し、人間が自ら死へ向かっていくのを目の前にしながら。それを見つめ続けなければならなかったのは、現場の職員である。
 無期限の収容か、あるいは帰国か。入管が提示する選択肢を選ぶことは、そのどちらもナイジェリア人男性にとって不可能であった。だがあくまでも入管は、冷徹にそれを示し続けた。そのような中で、ひとりの人間としての事情など一切、配慮されることはなく、聴く耳も持たれず、男性がついに生きることへの希望を失ってしまったということは想像に難くない。これが東京オリンピック・パラリンピックを控えた日本の、外国人対応の現状のひとつである。
 現在入管が行っている、期限のない長期収容、事情のある人への帰国の強要、そして正規の在留資格が無いことや退去強制令書が出ていることを理由に被収容者を犯罪者のように扱うことは、被収容者に耐え難い苦痛を与えるものであり、特に無期限収容は精神的拷問に等しい。
 自身の生命を守るために迫害国から逃れること、心身の健康を守るために必要な医療を受けること、家族と語り合いともに過ごすこと、不当な身体の拘束を受けないこと。人間には生きていくための当然の権利、基本的人権があるが、現在の長期収容ではそれのどれもが守られていない。このことが被収容者の人間としての尊厳を著しく傷つけている。
 頻発する外国人収容所内でのハンストや自殺未遂、そして自殺には、このような背景があるということを、法相および入管庁は憂慮するべきである。再発防止を考えるのであれば、法相が発表したようなハンストをさせないことや強制治療などによる方向ではなく、まず被収容者の当たり前の人権を回復することが必須であり、急務である。
 わたしたちクルド支援三団体は、日本におけるクルド人難民の支援と理解促進のために共に活動している。クルド人集住地区である埼玉県の蕨市や川口市における講演会や、都内で開催する展覧会において、現在の入管行政や、長期収容に苦しむクルド人難民の声を直接聴いてもらう機会をたびたび設けてきた。またトルコにおけるクルド人の抑圧について、映像や写真を上映し、クルド人がなぜ日本に来るのかの理解促進に努めてきた。いずれの講演会等においても「クルド人がこういった事情を抱えて日本に来ていることを始めて知った」という方や、「逃げてきた難民が日本の収容所で苦しんでいること、収容によって長期間にわたり家族とバラバラになっていること、収容所内で必要な医療が受けられないことに驚いた」という声を多数頂いている。会場内で、収容されているクルド人難民の仮放免を求める署名活動を行ったところ、非常に多くの方がその場で署名に応じてくれた。
このような事実からもわたしたちは、今の入管行政は日本社会の民意を反映しておらず、多くの人びとが今のような長期収容や送還を望んでいないことを実感している。
 クルド人難民をはじめとする難民申請者は、わたしたち日本社会が受け入れ、共に生きていく人びとであると考える。また難民に限らず、日本に家族がいる人や、日本人と結婚している人、既に日本に長く暮らしている人については、正規の在留資格がないからといって一律に排除の対象にするのではなく、それぞれの事情を鑑み、柔軟に在留を認めるべきである。
近年、在留特別許可は減少傾向にあり、そのことが本来、在留を認められるはずの人が収容されてしまう要因にもなっている。国際的な観点から見れば、長期収容については、2013年に国連の拷問禁止委員会が懸念を表明しいる。また、日本の難民認定率の低さについては、難民条約批准国であるにもかかわらず先進国としての難民保護の義務を果たしていないと、長年、国連からの指摘を受けている。
そして、柔軟性を欠く入菅の姿勢は、日本国内で排外主義的な言説をネットに溢れさせる一因にもなっているのである。
 五輪の「治安対策」を優先して収容や強制送還を促進強化していくのではなく、それぞれの人たちが持つ背景や配慮するべき点を丁寧に見ながら、理解を深め、在留を許可していくことこそが、多くの外国人労働者を受け入れ、真の国際化と多文化共生社会をめざす日本が取るべき姿勢ではないだろうか。法務省出入国在留管理庁は、率先してその在り方に道をつける責務があることを指摘する。
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